地獄の沙汰も金次第。
人も、街も、殺意すらも買える。それがキャッシュ。
容疑者、全員銀行強盗。
ギャングたちを襲った悲劇を追え――本格ハイスト・ミステリー。
【ストーリー】
1980年代、アメリカ、西海岸。夏の盛りを超えた頃。
海岸沿いのモーテルに、素性の悪そうな六人組の男女が集まっていた。
彼らの視線の先にあるのは、部屋の中央に置かれた大きなベッドだ。
大人一人分の膨らみがあり、誰かがシーツに包まって眠っているように見受けられる。
「少しくらい換気をしろよ。せっかくビーチが見えるんだぞ」
全員がベッドに集中していたからか、それともその人物が気配を消すことに長けていたからか、誰もその男が現れたことに気付かなかった。
六人は身構えたが、彼らはすぐに用のある人物がやってきたことに気付く。
モノクル眼鏡をかけ、痩身で、無精ひげを擦る癖がある男――裏社会を渡り歩く“未来が視える”探偵、噂通りのふざけた風体だ、六人はまったく同じ思いを抱いていた。
「私がシド・アップダイクだ。問題が起きたと聞いてやってきたが」
六人が顔を見合わせる。
そのうちの一人が代表してシドの前に進み出てきたので、シドが訊ねる。
「カネはどこに?」
その人物がベッドに手をかけ、一気にシーツを開き「こいつが知ってる」と言い放った。
「なるほど、喋ってはくれなさそうだ」
ベッドの上にあったのは、男の死体であった――
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