公開情報
B.鬼ヶ島満月(おにがしま まんげつ)
アップダイク探偵事務所に長く在籍している大男の探偵。
探偵の割にモノを考えるのは苦手なタイプだが、現場を足繁く回るのは得意だ。落雷に当たったボロボロのスマートフォンを携帯しており、いつも誰かと話しているようだが……?
今回の事件を通して、花木が一人前の探偵としてやっていけるかどうかをチェックしている。
調査内容
KOBUSHIクラブ PM23:48――
俺はまずアップダイク式私立探偵条件チェックシートを取り出した。この事件に駆り出される前に所長から手渡されたものだ。新人が探偵として有能かどうかを見定めるためのシートであり、そこには50もの項目がある。
(尾行は正確に行えるか?)
(少ない手がかりから犯人を割り出せるか?)
(牛乳とアンパンだけで8時間張り込めるか?)
(超能力は使えるか?)
などなど、多岐に渡る。俺はうーんと唸ってからそのチェックシートをゴミ箱に捨てた。そもそもシド所長がこれに合格しないのでは……?
まあ、こんなシートはどうでもいい。探偵に必要なのは、何よりもまず相棒を信頼する気持ちだ。バディとして肩を並べられないようなやつは、どんなに優れていても結局成果にはつながらない。俺は俺の観点から、花木朔太郎が探偵として問題ないか、ジャッジさせてもらうことにした。
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さて、捜査を始めよう。
俺はメイン会場付近をうろついてみた。本日の対戦カードが書かれていた。
“ジャガーノート”ランディとミスター・アイアンフィストが試合を行ったらしい。勝ったのはランディだ。
対戦カードを睨んでいると、たまたま居残っていた観客が通りかかった。俺はそいつらを捕まえて話を聞く。
鬼ヶ島 「今晩の一件についてどう思う?」
観客A 「アイアンフィストが負けるなんて今でも信じられねえ!」
観客B 「まったくだな……しかし、これでランディの人気はうなぎのぼりだろうな」
鬼ヶ島は観客たちの話をメモに取る。今夜はアイアンフィストという男が負け、ランディが勝ったようだ。
鬼ヶ島 「そもそも何なんだよこのクラブは。誰が作ったんだ?」
観客A 「ああ、どうもこのKOBUSHIクラブは、とあるメチャクチャ強いファイターが各地の闘技場で稼いできたファイトマネーを投じて作ったらしいぜ」
観客B 「おい、やめろよ、そんな眉唾な話。そんなヤツいねえよ。実際誰も見たことねえじゃんか!」
鬼ヶ島「はあ……伝説はさておき、実際に責任者はどこにいるんだよ。流石に誰かが管理はしてるんだろ?」
観客A「今の経営者のことか? いつも事務室で仕事してるぜ」
がはは、と笑いながら観客たちは去っていった。
鬼ヶ島 「なるほどね……一応、花木の尋問と擦り合わせてみるか……」
他にメイン会場付近に目立つものはなかった。
俺はクラブの入り口のほうへ流れていった。
※
鬼ヶ島(さて、そろそろあいつの力を借りるか……)
俺はスマホを取り出した。雷に当たり、ボロボロになったスマホだ。ぐにゃぐにゃに溶けており、電源も点かない。だが、その電波は霊界に繋がっている。その先にいるのは、神出鬼没で変幻自在の幽霊探偵デルデル・ユラーリィだ。
鬼ヶ島 「おう、元気か」
ユラーリィ「死んでるのに元気も何もないよ」
鬼ヶ島 「そうだな、じゃあ今回もひとつよろしく頼むぜ」
ユラーリィ「りょうかい~」
俺はたしかに頭は良くない。探偵失格といってもいいだろう。しかし、そこを補ってくれるのがこのユラーリィだ。辺りに漂う思念を読み取り、その場で起きた出来事をつぶさに語ってくれる。日時は指定できないのが玉に瑕だが、俺はユラーリィの能力を使って多くの事件を解決してきた。
――だが、ひとつだけ問題があった。俺のこの能力を誰も信じてくれないことだ。アップダイク探偵事務所は超ド級の変人探偵がひしめいているが、そんな奴らが(自分のことを棚に上げて)ボロボロのスマホに話しかける俺を白い眼で見てくる。
もしも俺とバディを組むなら、それはつまりユラーリィのことも認められるような奴じゃないきゃダメだ。バディには信頼関係が必要だ……花木には是非ともそう考えてほしいものだな。
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目標 CHECK!(※ゲーム終了時に分岐があります)
※花木咲多郎にデルデル・ユラーリィの存在を「信じる」と言わせる
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エントランスに来た。
地上階にあるバーでは、今でも紳士淑女たちがグラスを交わしていることだろう。さっさと捜査を終わらせて、そこで一杯やりたい気分になってきた。
鬼ヶ島「さて、そろそろ捜査を……お」
俺は灰皿スタンドを見つけた。溢れんばかりの量のタバコが突き刺さっている。
せっかくなので一服つけることにした。ぷか~と紫煙を吹かしていると、ユラーリィがもしもしと電話をかけてきた。
鬼ヶ島 「おお、ではよろしく頼む」
ユラーリィ「了解。じゃあ、エントランスに残っていた思念を読み取るよ……」
ユラーリィ「ピエロの恰好をしたヤツと、女がいるね。女のほうがエントランスまで煙草を吸いに来たみたいだ。ふたりは全然喋らなくて……ジェスチャーで意思疎通を図ってるみたいだね。何の話をしてるかはわからないけど、事件に関係するようなことはないんじゃない?
ユラーリィ「こんなところだね」
鬼ヶ島 「そうか、ありがとうな。これは今夜の出来事か?」
ユラーリィ「そうだね、正確な時間はわからないけど」
俺がエントランスを抜けようとすると、うなだれた様子のジョニーがやってきた。俺はとっさに柱の陰に隠れた。彼はポケットから煙草を取り出し、深々と吸う。
ジョニー「まったく、死ぬことはないだろう。せっかく成功したっていうのによ」
ジョニー「こんなとこで危ない橋渡るより、地元で偉そうにしてりゃ良かったんだ」
アイアンフィストのことだろうか? 昔を懐かしむ口ぶりだ。
彼と被害者のあいだには浅からぬ縁があるらしい。
※
俺は事務所に来た。このクラブを経営するトップがいる場所だ。
鬼ヶ島「あ、痛っでぇ!」
鬼ヶ島は何かにつまづいた。それは補修材や釘の詰まった箱だった。すぐ上の天井に出来た穴がベニヤ板で塞がれている。繁盛してそうなクラブだが、変なところでDIYなんだな……とぼんやり眺めていた。
事務所に入ってみると、カーペットに付着した血痕を見つけた。
死体があったのはメイン会場のはずだ。何故こんなところに血糊が付いてるのか?
血痕はメイン会場へと続いている――
***
続いて俺はメイン会場のほうへもう一度向かった。
ユラーリィから「また思念だよ」と電話。
ユラーリィ「今日行われた試合を視ているよ。アイアンフィストの負けだ。これは一発KOだね。ぼくはそのままアイアンフィストを追ってみたよ。彼は担架で運ばれて、青コーナー側の控室で目覚めてるね。傷を消毒しながらぶつくさ呟いてやがるよ。ついに負けてしまった……だの、今しかないか……だの、小さい声でよく聞き取れなかったけどそんな感じのことを言っているね。決心したような顔になって、あ! 覆面を外して外套を羽織って控室を抜け出たな! あれ、そのままエントランスからバーを抜けて……雑踏に消えて行っちゃった!」
鬼ヶ島 「立ち去ったのか!?」
ユラーリィ 「うん、そうだね。意外と若くてイケメンって感じだったけどな~」
俺は頭をひねった。アイアンフィストが逃げたのか? どういうことだ?
※
俺はもう少し青コーナー側の控室を探ってみた。
何ということはない。ロッカーと机が置かれたタダの部屋だ。今は誰もいない。
ユラーリィ「思念だよ」
鬼ヶ島 「おう、いいぞ、その調子でバンバン視てくれ」
ユラーリィ「……鬼ちゃん、仕事してる?」
鬼ヶ島「お前を連れて歩いてるじゃないか」
ユラーリィ「ここには中年の男が来たみたいだね。ランニングシャツ姿で、机の上で何か作業をしているよ。『へへ、これでヤツは』とかなんとか、半笑いで独り言をこぼしてるね。そのまま彼はすぐ立ち去ったみたいだ。どうやら飲み物に細工をしていたようだよ」
鬼ヶ島「一体、今の男は誰だ? アイアンフィストの控室で何をしていたんだ?」
ユラーリィ「それを考えるのは君の役目だよ」
ユラーリィとの通信は切れてしまった。もう少し捜査を手伝ってほしいところだったが、情報としては十分だ。
俺は一発大きく伸びをして、アップダイク式私立探偵条件チェックシートを取り出し……ああ、そうだ。捨てたんだった。まあ、いい。花木の探偵としての資質をチェックするのにあんなシートなんぞ要らん。
俺がこれだけ足を使い、そしてユラーリィがこれだけ情報を寄越してくれたわけだ。あとは花木が漢(おとこ)を見せる番だろう。さて、しっかりやってもらわんとな……!
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目標再CHECK!(※ゲーム終了時に分岐があります)
※花木咲多郎にデルデル・ユラーリィの存在を「信じる」と言わせる
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